「遅い」
「申し訳ございません、お父様」
「婚約破棄のことは聞いている。相変わらず役立たずだなお前は」
「申し訳ございません」
「まあ、どうでもいい。お前に新たな婚約話が来てる」
「え……?」

 シェリーの父親は顔をわずかにあげると、薄い目をシェリーに向けて言った。

「ヴィンセント王から婚約の申し出が来た」
「──っ!?」


 侯爵令嬢であるシェリーにとって、これは大きなチャンスでありこれからの物語のはじまりだった──