ジェラルドの手を振り切って部屋を退室したシェリーは重たい足取りで自室へと向かう。
 その途中にセドリックが話しかけるが、彼女の耳には届いていなかった。

 自室にたどり着いたシェリーはドアを勢いよく閉めると、そのまま顔をくしゃくしゃにして泣きながらベッドに飛び込む。

「あぁ……ひくっ……ぐすっ……」

 声にもならない鳴き声だけが部屋に響き渡り、そして枕はどんどん濡れて湿っていく。
 シェリーの心は感じたことない苦しさと、そして痛みに襲われていた。

(なにこの気持ち……悲しい? 切ない? ううん、どうしようもなく苦しい)

 シェリーはシーツをぐっと強く握り締めて身体を丸めてうずくまる。
 アリシアは廊下から彼女の慟哭を聞いてドアノブに手を掛けるも、やはりためらわれてそっとその場を後にした。


(私は甘かったのよ。ジェラルド様があまりに優しく接してくださって、それで感違いしてた。ジェラルド様は私のことを愛してなんかいない。心の中にはすでにあの写真の女性がいたんだ……)

 シェリーの脳内でジェラルドの言葉と声がこだまする。