「ごきげんよう、ウェールズ女史」
「ごきげんよう。私のことはクラリスと気軽に呼んでくださいませ」
「か、かしこまりました」

 意外ときさくそうな雰囲気に少し安堵したのもつかの間、クラリスは机に山積みになっている本を何冊か抱えると、そのままシェリーに手渡した。

「──っ!」

 あまりの重さにシェリーは前のめりにこけそうになるが、慌てて上半身をうしろに傾けてバランスを取る。
 クラリスはその様子をほとんど見ることもなく机の方に戻ると、本の上に手を置いてシェリーに告げた。

「シェリー様、あなたの妃教育を厳しくしてほしいと陛下とセドリック様より賜っております。厳しくいきますので、お覚悟を」

 その真剣な目つきにシェリーは少しすごんでしまったが、負けじと大きな声で返事をする。