馬車で2時間ほどで着く家では、メイドのアリシアが出迎えてくれた。

「お嬢様、おかえりなさいませ」
「もういいわよ、そのお嬢様呼び。今年で私も29歳だから」
「でも私にとってシェリー様はお嬢様でございます」
「ありがとう、アリシア」

 アリシアと共にシェリーは玄関をくぐり、自室へと向かう。
 そこにはシェリーの母親がいた。

「お母様っ?!」
「あら、帰ったの?」
「何をしてるんですか?」
「別に何もしてないわ、娘の部屋に入って何が悪いの?」

 母親は立ち尽くすシェリーの横を通り過ぎる瞬間に、わざと肩に当たるように通る。

「──っ!」
「あら、やだごめんなさい。ちょっと当たっちゃった」
「いえ、大丈夫です」

 シェリーは顔を歪めながらも冷静に母親に対して告げる。
 アリシアはその様子を不快そうに見つめるが、彼女の母親には気づかれないようにしていた。

 やがて、ドアが閉まるとシェリーはその場にうずくまった。