「ワイン、お好きなんですか?」
「ああ。それにここから見える月を眺めてゆっくりと飲む酒が好きでね」
「…………」

 シェリーは自分の手にあるワインを眺めると、その水面には自分の顔が映っている。
 横からジェラルドは何かに納得したように声をかけた。

「もしかして、酒は初めてかい?」
「いえ、社交界で少し飲んだことがあるのですが、味の良さが私にはわからず」
「構わないよ、もし苦手なら無理して飲まなくてもいいし、気に入ってくれたら飲んでもいい」
「は、はい……」

 実のところシェリーは社交界で飲んだ酒が美味しいとは感じなかったが、その言葉を聞いて彼女は一口飲んでみる。

「──っ!」

 一気に口いっぱいに広がる芳醇な香りと渋み、そしてその中にわずかにある甘味が心地よくシェリーは驚いた。