ぶっ飛んだお姉さんとのランチを終えてマンションに戻ると
リビングルームには彬が難しい顔をしてソファに座っていた


周りの空気までも凍りつかせるような雰囲気に
ばあやも狛犬も目を合わせようとしない

出掛けている間になにかあったのだろうか


「ただいま」


「お帰り」


ソファの隣をポンポンと叩くから
隣に腰掛けるとギュッと抱き寄せられた


「姉貴と出掛けるなら、声を掛けても良いだろ」


・・・原因は私だった


「・・・ん?彬は寝てたでしょ」


「心配するだろ」


「お姉さんと出掛けたんだよ
何か心配なことってある?」


「誰と出掛けても心配さ」


「いい加減にしてよ
そこまで言われると引くんだけど」


「引くってなんだよ」


「私は彬の所有物じゃないのよ
いちいち報告の義務もなければ指図される覚えもないわ」


苛立ちに一気に言葉が溢れてきて
言い過ぎだとは思ったけれど
どうにも許せなかった


「ちょっと話しをしよう」


手を引かれてリビングルームを出た

掴まれた腕は離されることなく寝室に入ると
ベッドに腰掛けた彬の前に立った


「みよのこと、俺は所有物なんて思ったこともないぞ」


「何が心配なの?
私はあなたのお姉さんと出掛けたのよお姉さんと二人で食事をしただけ
たったそれだけ!その何が心配?」


「それでも不安だ、それに」


一度区切った彬は

「あなたって何だよ」

逆に噛みついた


交わることもなく続く話に
沸々と湧き上がる怒りが抑えられなくなった


「私このまま付き合っていく自信ない」


「なにを言うんだ」


「何度も言うけど、こんなの無理」


「どうすればいいんだ」


「別れる」


「それでいいのか?」


「いいよ」


何のためにここに来たのか分からなくなった

力を失くした彬の手が離れた瞬間

終わりの音が聞こえた


「帰る」


「そうか」


ウザいほどの執着を見せていたのに
意外にアッサリと引いたことに驚く

けれど、追い縋るのはプライドが許さない


「さよなら」


寝室を出てリビングルームに入るとばあやが泣いていた

それでも、自分のことで精一杯な私は
声もかけずに、未だ置かれたままの荷物を持ってエレベーターに乗った