「キャッ」その不安定さに不本意ながらも首に手を回すと

「良い子だ」なんて微笑んだおじさんは
入った時とは真逆の扉から出ると、広い廊下を進み、細工の施された大きな扉の前で止まった


「・・・っ」


ピピと電子音が聞こえたあと開かれた扉の中は


大きなベッドが鎮座する
広い部屋だった


「ちょ、やっ、なにっ?」


パニックになる私を完全に無視したおじさんは
更に部屋の奥にある扉の中に入ると大きなガラス扉を開けた


・・・お風呂?


湯気の向こうにバスタブが見えた瞬間


バシャッ ザザザーっ


温かいお湯の中に落とされた


「何すんのよ!おじさんっ!」


なんとか起き上がった私の腕を引きあげたおじさんは、ずぶ濡れの私を引き寄せると唇にキスを落とした


・・・・・・なに


意味がわからない・・・


それより、なにより
やられたままなんて私の性分に合わない


「可愛いよ。みよ」


濡れた私を笑うおじさんがバスタブの縁に座った瞬間

肩を引いて落としてやった


不意打ちのそれに驚いたおじさんも
私を落としたことの報復と捉えたようで



「「ブッ」」



最後はずぶ濡れのお互いを見て吹き出した


制服とスーツ姿の濡れ鼠
ここまでくれば開き直るしかない


「おいで・・・帰るまでに制服乾かそう」


おじさんは濡れたスーツを脱ぎ捨てると全裸にバスローブ姿で出て行った


置かれたバスタオルとバスローブを見ながら
大きく息を吸い込むと肌に貼り付く制服を一気に脱いだ


バスローブを身につけたところで戻ってきたおじさんに一歩後退る

その警戒心に気付いたのか


「安心して、手は出さないから」


自嘲気味に笑うその瞳は苦しそうに揺れた


「ここに座って」手を引かれてベッドに腰掛けると


おじさんはドライヤーを片手に戻ってきて丁寧に髪を乾かしてくれた


「実は・・・みよのことをずっと前から知ってる」


「・・・え」


そう始まったおじさんの話は
私と会ったという四年前のものだった


「中学生の頃なんて、覚えていないか」


真っ直ぐ向けられる瞳は、僅かに揺れている


「あの頃一目惚れした気持ちは
再会した今も変わってない」


「・・・」


「俺を信じてくれないか」


勝手な言い分だと思った

大人の気紛れな遊びなのかもしれないとも思った


けれども、おじさんの真っ直ぐな瞳に抗えないうちに


不安な気持ちが曖昧になって
最後は頷いていた