着いた店は彬の実家のような
見るからに高そうな雰囲気


「私、此処でプロポーズされたの」


日本庭園に視線を移すお姉さんは懐かしむように目を細めた

この店で正座でもしながら
お兄さんは頭を下げたのだろうか?


「あの池の辺りでね」

・・・違った

廊下を歩きながらお庭を見ると池が見えた


「お姉さんとお兄さんの話も聞きたいな」


モデルのようなお姉さんと
背の低い小太りのお兄さんの馴れ初めは気になった


「また今度ね」


「こちらで御座います」


通されたのは掘り炬燵がある個室で
床の間の掛け軸と生け花が素敵な部屋だった

お昼のコースを食べながら
少し悩んだけれど院長の話をした


「誘われたの?」


「家に帰ってからで良いからって」


「進もなかなかやるじゃない」


「困ってるんです」


「困ってるってことは、まんざらでもないって受け止めるけど、違う?」


「・・・かな」


お姉さんの鋭さに白旗


「ごめんね・・・彬もそうだけど
きっと免疫が無いと思うの」


「免疫ですか」


「みよちゃんのことが危なっかしくて目が離せないんじゃないかな
守ってあげたいのに従順にはならないから
気になってしょうがないのね」


「理解に苦しみます」


「いいの、みよちゃんはそのままで」


「真面目に相談してるんですけど」


「ごめんね。当分恋愛してないから
私も何だか楽しくなってきたわ」


「・・・お姉さん」


「みよちゃんはどっちが良いの?」


「どっちって、お姉さんは彬のお姉さんでしょ」


「そうだけど。
みよちゃんが幸せならどっちでも良いのよ」


この人の頭の中は私の理解を超えている


「進さんには交換条件として
食事にさそわれたんです」


「食事でしょ?だったら彬も許してくれるわよ」


「許してくれない気しかしません」


「あの子に独占欲があったことが奇跡よ」


「それに、食事だけで返して貰えるかどうか」


問題は寧ろそっちかもしれない


「それでもよ、結婚してないなら良いわよ」


「お姉さん!
真剣に考えてくれてますか」


「考えてるわよ?
例えば~、私なら進にも抱かれてみるわね」


「・・・え」


「良いじゃない。減るもんじゃないし」


「減ると思いますけど」


「だったら、彬とのお試しを終わらせて
進とも一ヶ月お試ししてみれば良い」


「・・・・・・」


どこまでも我流なお姉さんの提案に思考回路が止まった