五時に夕食が運ばれると
食べる間ずっと側にいて見ていた


「みよもこれで良いんじゃないか」


「嫌よ、だってこんな餡掛け豆腐の上にグリンピース三個とか」


「否定の基準はグリンピースか」


「フフ」


「好き嫌いが多すぎ」


「好き嫌いがあっても
こんなに大きくなったから大丈夫」


食べ終わると食器を返却し
少し化粧を直した


「あいつとご飯に行くのに
化粧なんて必要ないじゃないか」


「ダメよ。折角誘って貰ったのに
汚い子だとガッカリするでしょ」


「知らない」


またも布団を被ってしまった彬を放置で迎えに来てくれた院長と出掛ける


「何か食べたいものある?」


「先生にお任せで」


「白衣を脱いだら先生じゃなくて
進《すすむ》って呼んでよ」


「フフ、じゃあ進さん」


「お、いいね
では俺のオススメにするね」


「よろしくお願いしま〜す」


院長の助手席に乗って、着いた店は拓斗を連れてきたことのある洋食屋さん【灯】だった


「来たことある?」


「前にお姉さんと拓斗と一緒に」


「俺、ここのビーフシチュー好きなんだ」


案内されたのは二階の個室だった


「うちの会社から五分位の場所にある洋食屋さんのビーフシチューもオススメ」


「・・・会社?確かみよちゃん家は
不動産関係だったよね」


「そうだよ」


「あの辺だと土鍋の店かな」


「知ってるの?みよもこの前
連れて行ってもらったところなの」


「それって彬に?」


「ううん。従業員さん」


「男だろ」


「そうだけど、なんで?」


「そんな気がした」


勘がいいのか鋭い院長に驚く

お喋りしている間に料理も並び
土鍋の店とは違う味を楽しんだ


「これも美味しい」


「そうだろ」


デザートは甘党の院長とショコラケーキとベリータルトをシェアした


「みよちゃんは天然小悪魔人たらしだな」


「なんで?」


「ケーキのシェアなんてしたら
普通は勘違いするだろ」


「進さんは勘違いするの?」


「俺は既に勘違いしてる」


「フフフ」


本気と遊びの区別もできない大人のお喋りを冗談だけで躱す


「さぁ、間違いなく妬いてる彬が
泣き疲れて眠る前に帰ろう」


「フフ、御馳走様でした」