「どうだ気分は」


聴診器を当てながら聞く院長を


「もう退院出来るだろ」


彼は懇願するように見つめてみても


「週明け、だな」


バッサリと切られていた


「俺は良いけど。みよが退屈だろ」


「おや、いつの間に自分以外の心配も出来るようになった」


「茶化すなよ」


「みよちゃん彬はこう言ってるけど、どう思う?」


「週明けまでお願いします」


「ほら。お前に決める権利はないの
で、みよちゃんご飯はどうする?」


「あっ忘れてた」


「ご飯ってなんだ?」


彬が院長と私の顔を交互に見る


「お前は病院食で良いけど
みよちゃんは可哀想だろ
だから俺が三食つき合うよ」


「ダメだ、お前なんかと」


「お前なんか?」


「彬、何てこと言うの」


「毎食二人で食べに出掛けるって、浮気だよな」


看護師長さんも堪らずクスクス笑い始めて


「決まり!みよちゃんは俺とご飯を食べに行く」


強制的に院長が話を終わらせた


「よろしくお願いしま~す」


彬に向かってニッコリ笑うと、頬を膨らませたかと思ったら布団を頭まで被ってしまった


「こいつ、いつからこんな感じ?」


「私の知ってる彬はずっとこんな感じよ?先生」


院長達は大笑いで病室を出ていった


気配が消えると布団から少し顔を出した彬は手招きをした


「みよここに来て」


「ん?」


近づくとギュッと抱き寄せられた


「みよ、愛してるよ」


明確にしないままの“お試し”


抱き寄せられたまま塞がれた唇は
戸惑いだけを残した



・・・



コンコン


スライドドアが開いて現れたのは
明るい照明の下でも綺麗な玲奈ママだった


「ご機嫌いかが」


「玲奈、世話になったな」


「もぉ本当に勘弁してよ~
商売の邪魔だったんだからねっ」


頬を膨らませても綺麗な顔


「悪かったな。玲奈が俺の酒を安物に替えたから悪酔いしたんだな」


「なによそれ~
あっ、これはみよちゃんに」


大きな花束は私にくれるらしい


「ありがとう玲奈ママ」


花束を受け取って花瓶に生けると
また少し華やかになった


「みよちゃんには感謝してるのよ
彬聞いた?みよちゃんカッコよかったんだからね
まっ水を頭からぶっかけた時は驚いたけど」


「水?」


「玲奈ママそこはバラしちゃダメなところ」


「あ~らごめんなさいね
ところで彬、唇がキラキラしてるわよ」


「え」
彬は唇を指で拭うと指を見て笑った


「はいはい御馳走様~」


暫くお喋りすると出勤だと言う玲奈ママは妖艶に微笑んで帰って行った