コンコン


院長は白衣を着てやって来た


「ちょっと肝臓の数値が悪いんだ」


「大丈夫さ」


「ちゃんと診てもらわなきゃダメ
先生お願いします」


「クッ、みよちゃんの言う通りだ
もう一時間もすれば点滴外すから
少し動けるようになるさ」


「あぁ」


「じゃあみよはお姉さんに電話するね
心配で待っているはずなの」


院長が病室から出ていったあと
お姉さんの電話を鳴らすと、もう近くまで来ているらしかった


電話を切って十分もすれば
彬のご両親も一緒に現れた


「ったく馬鹿なんだから」

「お前は何をやってるんだ」


お姉さんとお父さんの呆れた声に
彬は渋い顔しかできない様子で
助けを求めるみたいに私から目を離さない


拓斗は病院が苦手なのかお兄さんに抱きついたままだ


「みよちゃん、二人に聞いたわ
全て仕切ってくれたから助かったって」


「全然です」


狛犬はソファ脇のテーブルに本を置いてくれた


「これで良かったかな」


「うん。ありがとう」


「みよちゃん。私達まだここに居るから
帰って少し休んで来たらどうかな」


「・・・んと、じゃあ、お風呂に入りたいから帰って支度してきますね」


「今日は一日フリーだから
ゆっくりしてきて良いからね」


「姉貴は余計なこと言うなよ」


「アンタは黙ってて」


「ここで喧嘩は止めなさい」


お母さんが呆れ顔で間に立つとお姉さんが片目を閉じた


「松本、みよちゃんをお願いね」


「はい」


不安そうな彬を置いて病室を出た


「若は一人が苦手だから」


「家族全員来てくれたのに?」


「みよさんに居て欲しいんだ」


「みよも好かれたもんだね」


「クッ、そうだな・・・ま、
みよさんも疲れた顔をしてるから
少し休んで落ち着いた頃に電話くれたら迎えに来るよ」


「じゃあお言葉に甘えて
少し寝て支度出来たら電話するね」


家に戻ると両親も心配していて
とりあえずの説明をしてお風呂に入った


「お母さん少し寝るから
二時間したら起こして」


「分かったわ」


髪を乾かしてベッドに潜り込むと
あっという間に眠りに落ちた








「みよちゃん」

揺り起こされ目を開ける


「・・・二時間?」


「ちょうどよ、もう少し寝たほうが良いんじゃないかな」


「良いの・・・病院に戻るね
今夜も病院に泊まって良いかな
彬もう少しかかるみたい」


「献身的ね」


「・・・ん」

私の中を大きく占めているのは
気持ちを明確にせずに引き延ばした罪悪感


「お父さんに説明しておくね」


自分の口からも伝えようと父に電話をしたけれど
「回復するまでな」と一言だけだった


狛犬に連絡すると直ぐに迎えに来てくれて


「みよさん・・・この荷物」


キャリーバッグ二つを見て狛犬は苦笑い


「着替えとか色々?」


「部屋中の荷物全部か」


「嫌な感じっ、女子は何かと必要なんですっ」


「クッ」


病室に戻ると拓斗が抱きついてきた


「みよまってたよ」


「お待たせ」


「くるくるのかみもかわいいよ」


褒めながら髪に触れるところなんて日本人とは思えない


「みよちゃん大丈夫?」


「そうよ、もう少しゆっくりでも良かったのに」


お母さんとお姉さんが心配してくれた


彼の家族の座るソファセットを抜けてベッドの脇に腰掛ける


「お父さんに許可を貰った」


「じゃあしばらく入院しててもいいかな」


「お前は馬鹿か」


お父さんの呆れ顔を見たところで


「このまま皆でお昼ご飯を食べに行きましょう」


お姉さんが提案をして
彬だけを残して狛犬も一緒に出掛けることになった