ーーーーー二日後


お姉さんから夕飯のお誘いを受けた


(彬に内緒で遊びに来ない?)

「内緒もなにも会っていなくて」

(そっか。まだ修復出来てないのね)

「はい」

(拓斗が会いたいって言ってるの
良かったら気晴らしにどうかな)

「分かりました」

(じゃあ迎えに行くわね)

「はい」


お正月休みも終わって世の中は動き始めたけれど

教習所以外は出掛ける気もなくて
引きこもっていたから
気分転換にはちょうどよかった


「お出かけ?」


「彼のお姉さんとご飯を食べることになったから」


「じゃあ晩御飯は要らないのね」


「うん」


さっとシャワーを浴びて髪はストレートのまま乾かす

メイクは大人仕上げで
いつもの自分よりキツメの鎧を纏った


お姉さんは自らの運転で拓斗と迎えに来てくれた


「くるくるしてないじゃん」


いつものように髪に触れる拓斗は
少し頬を膨らませた


「今日は髪もお休みなの」


「ぼくサラサラしてるのもすき」


「ありがとう」


「みよはおじちゃんとケンカしたの?」


「・・・え」


「ばあやがいってたよ
みよとケンカしたから、いっぱいおさけのんでるって」


「・・・え」


「こら拓斗!男のお喋りはみっともないよ」


ミラー越しに拓斗を叱るお姉さん


「お姉さん本当ですか?
彬、お酒いっぱい飲んでるって」


「大丈夫よ。子供じゃないんだから」


上手く誤魔化されたところで着いたのは彬の実家だった


ご両親は出掛けているらしく
お姉さんと拓斗とダイニングに入るとお兄さんが待っていた


「ご家族水入らずのお邪魔じゃないですか?」


「良いんだよ、みよちゃんにご馳走したいって愛実の提案なんだ」


「ありがとうございます」


お手伝いさんとお姉さんが料理をする間
拓斗のお絵描きを見ていることになった


「みよはひらがなかける?」


「書けるよ」


「おれも!」


お絵描きを中断してクレヨンで書いてくれたのは


“みよ”私の名前だった


お兄さんは時折りお喋りに加わるだけ

さりげなく、邪魔にもならず・・・
でも居ないと寂しい
そんな素敵な空気感を持ってる人だと思った

食事の支度が出来ると四人で食卓を囲んだ







「みよちゃんのために作ったの」


最後にお姉さんが出してくれたのは
フルーツたっぷりのロールケーキだった


「美味しいです」


「嬉しいわ」


美人で気さくでお料理上手とか
「二物を与えられましたね」


「・・・え?なになに、フフフ」


ついでに笑顔が可愛いとか反則なお姉さんに
此処に連れて来られたのは彬と会わせるためかと疑った自分を反省した