私のことが原因で彼がお見合いを断った訳ではないけれど


「みよ、大丈夫か」


「大丈夫じゃない」


混雑するデパ地下で立ち止まったままの私と彬を
すれ違う買い物客は珍しそうに見ながら通り過ぎる


「一人になりたい」


「・・・え」


一瞬、驚きに目を見開いたけれど


「送っていくよ」と肩を落とした


視線を合わせることすらないまま車から降りると部屋に入ってベッドに潜り込んだ


こんなことなら
お試し期間を曖昧に延ばさず
話し合うべきだった


コンコン
ノックと共に扉が開いた


「みよちゃん、大丈夫?」


いつもと違う雰囲気を気にしているらしい母は
ベッドのそばに座ったようだ


顔を見て話す気分じゃないけれど
こんなこと相談できる相手がいない


「あのね」


デパ地下での話をポツリ、ポツリと吐き出す

静かに聞いてた母は


「母さんが思うに・・・イケメンで御曹司、それに歳の差もある人とつき合ってるんだから
色々あって当たり前だと思うのよ
でも、みよちゃんが付き合っているのは今の彼だから・・・
過去は過去として勲章的に思ってあげないと
みよちゃんのことを好きな彼の気持ちまで疑うことになるよ」


母は彬との付き合いに反対ではないのだろうか

父ほど毛嫌いしている感じでもなくて
それがまた昔とダブって思えた


結局・・・
論点が違う人との話は平行線
というか、母の独演会のようで

長い話に途中姉も加わり
母は夜ご飯の支度を忘れた


「みよちゃんのお悩み相談してたの」


私をダシにしたことで、父は母娘の話ができたことを喜んで


「良い傾向だ」


家族で外食することになった


「面倒なら別れろよ」


「反対だもんね?」


「・・・親としてな」


「お父さんはみよに甘いのよ」



お試し期間も一ヵ月を超えたから
嫌なら解消すれば良いだけのこと


結論は実に簡単で



彬には[少し時間が欲しい]とメッセージを送った