合コンの翌朝、彬から届いたメッセージは


[大学の友達が家に来るから
みよを紹介させて]


またもおじさんの集いへの招待だった


不本意ながらも行かない選択はなくて

戦いへと備えるべく支度を始めた


「なんか、今日も気合い入ってる」


デパコス店員の夏実から教わったメイクを完璧に仕上げると

母は「一枚だけ」と写真を撮った
それに笑顔で応えた自分に少し驚いた


「彼の学生時代の友達が集まるんだって
それぞれ奥さんや彼女が来るから
なんか、負けらんないでしょ」


「どうせ年上ばかりなら、負ける訳ないのに」


「もちろん勝つ気しかないけど」


「フフ」


母と笑い合うなんて久しぶりのことに
若干戸惑いすら覚える


彬が迎えに来ると「可愛い」と
母より多く写真を撮るから最後は頬も膨らませた


マンションに着くと、リビングルームのテーブルはセッティングされていて

パーティー仕様になっていた


「ばあや。みよも手伝うよ」


「いいえ、みよさんは座っていてください」


テキパキと熟すばあやはやっぱり素敵だ


「みよ、おいで」


彬に手招きされてソファの隣に座ると髪を撫でられる


「巻いてるの落とさないでよ」


「落ちたって可愛いよ」


「勝負だからダメ」


「みよは可愛い」


そこからはモニターが鳴るたび
彬が対応しエレベーターを動かす

手を繋いで玄関まで出迎えると
順当に三十歳の友達がパートナーとやってきた


「久しぶりっ」


「いらっしゃい」


「おいおい、随分可愛い彼女じゃないかぁ羨ましい」


そんな会話が繰り返され
リビングルームに全員が揃うと乾杯になった


「久々のマッスルサークルに乾杯」


「「「「乾杯」」」」


耳を疑うようなネーミングに
友達のお腹に視線を流す

メタボ一歩手前のだらし無さに
コッソリため息を吐き出した


パートナーと合わせての自己紹介から始めようと声が上がり


「彬、紹介しろよ」


トップバッターは彬になった


「こちら山下みよさん
春から誠愛の一回生」


「なに?てことは・・・高校生?
どこで知り合った」


食い気味の質問も


「細かい話は抜きにして」


曖昧に笑った彬に誤魔化された


まさか、誘拐したとも言えずってとこが本音だろう

それぞれの紹介も終わると

延々と質問責めにされた・・・結果

誘拐された話からバラした所為で
彬は友達の失笑を買っていた