「五年振りかな」


「そうだよな」


「どうしたの?眉毛がある」


「当たり前だろーが、もう十八だぞ」


「直也が言うと老けた気になるからやめて」


「なんだそれ、っていけねぇ
親父忘れてきた。お~い親父~」


大声と手招きにやって来たおじさんは
父と面識があるようで
お互いの子供が友達ということに驚いていた


「会えて嬉しいよ」


無邪気に笑いながら抱きつく直也は
見た目は別として五年前と変わっていない


「離れてよっ」


昔と変わらない距離感に抵抗したけれど全く離れてはくれず


「あちらの席に座りましょうか」


おじさんの提案でようやく離れてくれた直也とソファ席に移った



直也との出会いは中学生の頃、所謂“不良”と呼ばれる友達でいつも一緒に居た

当時は身長も私と同じくらい
金髪に眉毛ナシ、チェーンの着いた財布の所為で腰パンはいつも余分に下がっていた

あの頃十回以上告られたけど
いつも笑って流していた


ソファの隣に座り肩を抱く直也を
父と姉とおじさんは鳩豆顔で見ていて


「馴れ馴れしいんだけど」


肩に置かれた手を叩いてみれば、堪えきれない様子で吹き出した


「笑うなよ親父、五年振りの再会なの
俺、みよに十回以上振られてるんだ」


「一回振られたら普通諦めるだろ」


「まぁ、そう言うなよ
で、結局みよは何処の高校行った?」


「加寿ちゃんと誠愛」


「おぉぉぉ加寿か。懐かしいなぁ
誠愛って、みよはお嬢だったのか?」


「春から加寿ちゃんと女子大生だよ」


「マジか、なんだよ、髪もクルクルして可愛いじゃないか」


「直也が言うと昔ブスだったみたいじゃん」


「昔から別格に可愛かったよ」


「ありがと。直也だってスーツ似合ってるよ
あ、お父さん。直也ってね〜不良だったんだよ〜」


「ハハハ、それを知ってるみよも
随分とやらかしてくれたよな」


二人の父親は話を聞きながら目を細めていた


「あんた達よく更生したわね~」


泣き真似をした姉が笑うから
最後は皆んなで吹き出した


「直也は大学?」


「俺は親父の店に就職」


「へぇ」


「もっと俺に興味を待てよ
再会の記念に俺と付き合うか」


更に密着するように肩を抱くから
逃れようと踠いた瞬間


「失礼します」
静かで強い声が割って入った


「これは青野さん」


直也のお父さんの声で振り返ると
彬がソファのすぐ脇に立っていた

・・・え、なんで?
七日にしか会えないと思っていた彬の登場に驚いている私に


「みよ、こちらは?」


質問した割に、視線だけは真っ直ぐ直也に向けた状態に、悪いこともしていないのに焦る


「こちらは直也。同級生なの」


「へぇ同級生」


見下ろしてくる視線が益々キツい


「こいつダレ」


それに応戦する構えの直也も顔つきが変わって
和やかな雰囲気は一瞬で消え去った