車が止まったのは中央駅前だった


「・・・?」


手を繋いで駅前広場に降り立つと


「クリスマスデート」


「・・・っ」


彬はフワリと微笑んだ



彬と出掛けるのはいつも車で
手を繋いで歩くのも僅かな距離ばかり

背伸びをした付き合いだからと諦めていたのに


クリスマスに叶えるあたり
演出は完璧なのだと思う


「彬」


「ん?」


「楽しみだね」


「・・・あぁ」


だから、今日だけサンタに免じて色々を忘れてあげる


「フフ」


「ん?」


「クリスマスだからね」


「そうだな」


手を繋いで歩く街は、寒さを感じないほど楽しくて


デパートから駅ナカ、美術館に食べ歩きまで


普段できないことを全部やり切った



だって



「七時からだよな?」


クリスマスの夜から始まる短期集中講座を申し込んだのは父


彬とのクリスマスディナーが実現しなかったのはこの所為で


もちろん逆らえないからクリスマスランチに変更になった


救いは加寿ちゃんと一緒ということだけで

年明け早々にある学部選択試験の為に
加寿ちゃんの親も乗り気だったそうだ


「次に会えるとしたら大晦日」


「いや、せめて塾の送迎だけでもさせて欲しいってお願いした」


「お父さん、OKしたの?」


「あぁ」


「・・・よろしくね」


「友達も一緒で良いぞ?」


「竹田さんの運転なの?」


「あぁ」


「加寿ちゃん喜ぶね」


「俺も」


「フフ」


夕方には一度家に送って貰い
彬も一緒に降りて、竹田さんが迎えに来るのを待った


加寿ちゃんを拾ったあとは
真っ直ぐ塾まで送られて


三年振りのプチ受験体験が始まった