「おじちゃ~ん」


足音を鳴らしながら駆けてきた拓斗は
引き戸を勢いよく開いて部屋に飛び込んできた


「みよ〜」


“おじちゃん”と叫びながら走って来た癖に

私に抱きつく現金な拓斗に肩透かしを食らった彬は


「そこは俺だろう」と苦笑い


遅れて入ってきたお姉さんは
“もしも”の時の着替えやおやつを袋に詰めて持っていた


「今日はよろしくね」


「あぁ」


「ねえ拓斗は何して遊びたい?」


「みよとならどこでもいいよ」


「こら拓斗、昨日も言ったぞ
みよは俺の彼女だ」


「わかってるって、しつこいよ
おじちゃんは」


六歳児に宥められる彬に吹き出したところで“お守り”がスタートした



ペットショップ巡りから始まった
拓斗のやりたいことは


フードワゴンの生搾りジュースを飲むこと

本屋さんでの立ち読み


くるくる回るお寿司屋さんと続き


ゲームセンターで完結してしまった


しばらくは子供向けのボールプールやUFOキャッチャーで遊んでいた拓斗も


飽きて来たのかベンチに座る私の隣に腰掛けた


「みよのママって怖い?」


「怖くないよ」


「ぼくね、みよのうちにいきたい」


「・・・家?」


「そう。みよのおうち」


まだ返事もしていないのに私の手を引いて歩き始めた拓斗を止められそうもなくて


諦めて母にメッセージを送ると
[連れておいで]と快い返事


「こんにちは」


「いらっしゃい」


意外なことに、靴も揃えて挨拶もできる拓斗は

真っ直ぐ私の部屋へと向かった


「みよのへや、かわいい」


「ありがとう」


使っていないクロッキー帳を出して
お絵かきを始めるところは無邪気で可愛い


この後の予定を考えようとしたタイミングでお姉さんから連絡が入って
お守りの終了が決まった


大したこともしていないのに拓斗を送り届けた後は
彬のマンションへ戻って、そのままベッドへ沈んだ