「あーーーっ
おじちゃんがみよにキスした」


「パパとママもするでしょう?」


「みよっ、ぼくもっ」


駆け寄ってきた拓斗に、彬とは反対の頬にキスしてもらった


もちろんそれに対抗する彬は


「子供ね」とお姉さんにバッサリと斬られていた


帰りは素直にママと同じ車に乗った拓斗を見送ってマンションに戻った


「みよ、渡したいものがあるんだ」


そう言って連れてこられたのは寝室で
クローゼットの中から出してきたのは
リボンのかかった箱だった


「開けてみて」


箱の中には革のケースが入っていて
それを開くと、ネックレスが入っていた


「指輪と同じデザインなんだ」


そう説明する彬に、私は何を返せるのだろう


「・・・みよ?」


ネックレスを見たまま黙る私を見つめる彬の瞳は揺れている

慌てて

「ありがとう」とお礼を言った


「あぁ」


右手の薬指に収まるリングとネックレス


“お試し”の付き合いに二個もジュエリーをプレゼントされる意味は・・・

悪い癖が出る前に彬と視線を絡めた



「フライングでごめんな」


「サンタも慌てたのね」


「あぁ」


「貰って直ぐで悪いけど、帰るから」


帰り支度を始めた私の手を取った彬は


「みよはすぐ帰るって言う」


少し拗ねた表情を見せた


「今日は携帯電話を置いてきたままだから心配するでしょ」


「お母さんに電話しとくか?」


「・・・うん」


松本さんの運転で家まで送って貰い、彬は出てきた母に挨拶をすると帰って行った


「ネックレス?」


「クリスマスプレゼントだって」


「ごちそうさま」


彬との付き合いが始まって
母と挨拶以外も交わすようになった


頑なだった態度を崩せたのは
大人な付き合いに戸惑っているからかもしれない


部屋に入ると一番に加寿ちゃんに電話をかけた


「加寿ちゃん、ごめんね」

(いいよ、気にしないの)


心配して叱ってくれた加寿ちゃんを
大切にしなきゃ罰が当たる





ーーーーー翌日



朝一番に迎えに来た彼は、何故か私の部屋に通された


「女子高生の部屋は初めてだ」


「やな感じ」


「ごめん、怒るなよ
ピンクが多くて可愛いな」


ソファに腰掛けて部屋を眺めている


「今日はなにか用事があるの?」


「姉貴が家を探す間
拓斗を預かることにした」


「へぇ」


車は加寿ちゃんの彼氏の竹田さんの運転だった


彬の実家に到着すると、朝の散歩に出掛けたあとだった