電車に乗って街まで出ると
いつものバーガーショップの二階席に座った

終わらないお喋りを中断させたのは


「「おっ」」


元カレの勝也を含む同級生グループだった


「お前らなにしてんの」


そんな愚問には
「食事中」
敢えてそのまましか返さない


面倒なレベルが彬とは違うと
加寿ちゃんと顔を見合わせて苦笑いしか出ない

離れて座ると思った勝也達は
空席が多くあるにも関わらず隣の席にやって来た

テーブルの間隔の狭い店内は
同じテーブルを囲むような近さで


♪〜


微妙な空気が流れる中、鳴り始めたのは、加寿ちゃんの携帯電話だった

瞬時に目尻が下がる様子に相手が想像できた


「もしもし。うん大丈夫
今ね、みよちゃんとごはん」


加寿ちゃんは順調らしい


手持ち無沙汰を誤魔化すように携帯電話を手に取ると


「平田の新しい彼氏って、みよの彼氏の部下なんだろ?」


間近で聞こえた勝也の声に
反射的に視線を合わせてしまった


加寿ちゃんが元カレと別れる時に
竹田さんの手を借りたから
元カレと友達の勝也は聞いたのかもしれない


答えない私から目を逸らさない勝也に戸惑っているうちに
私の携帯電話も鳴り始めた

「もしもし」

(友達と一緒って聞いた)

「そうだけど・・・なに?」

話の伝わる早さに苦笑いをしながら外の景色に視線を移した

漸く勝也の視線から逃れられると安堵したのに

隣の席から「みよ」と呼ぶ勝也に
外した視線を一瞬で戻した

・・・は?

プチパニックに陥る私は
通話を切ってしまった


もちろんすぐに鳴り始める携帯電話を耳に戻す

(もしもし、他に誰か一緒なのか?)

「違うよ、加寿ちゃんと2人
でも同級生が隣の席にいるから」

本当のことなのに懸命に説明をする私は滑稽だろう

(そうか、切れたから驚いた)

「そうだね。ごめん何か用事だった?」

(いや。少し声が聞きたかった)

「そっか、食べてるから、また」

切ろうとした瞬間、また勝也に名前を呼ばれた


これが故意じゃなければ何なのだろう
苛立ちを隠せない私を

「みよの彼氏怒ったかな」
勝也は鼻で笑った


此処で喧嘩をする訳にはいかない


「怒る訳ないよ、大人だからね」


あれだけ“大人”に反応した癖に
大人を盾に取り


勝也に怒りが伝わるように
声に力を入れた