「あ、きら・・・」
「シーーッ」


唇が塞がれると、いつもより長いキスのあと
コツンとオデコが合わせられた


「俺のこと好きか?」


「・・・わかんない」


「まだみかんだな」


自分に言い聞かせるような呟き


見つめ合う彬の瞳には
私の顔が映っている


引き寄せられるように合わせた唇は
お互いの熱を合わせるように熱く甘い痺れを生む


キスが深まるたび
寄り添う身体の温もりが微睡みへと誘った




・・・



「みよ」


「・・・・・・ん」


彬のそばは催眠効果でもあるのだろうか


ドライブと食事だけのデートなのに
またも寝落ちした結果


「何時?」


「もう十八時を過ぎたよ」


「・・・まじ」


「クッ、マジ・・・で
夜ご飯は食べられそう?」


「うん。それは大丈夫」


「みよは若いよ」


「食べて直ぐ寝たから、お腹空いてないの?おじさんだよね?」


笑いながら彬の頭を撫でると


「次、おじさんって言ったら
家に帰さないからな」


真顔で脅された


「フフフ」


なんというか・・・
歳の差十二歳を忘れた瞬間だった


出掛ける準備を始めたところで彬の携帯電話が鳴った


「はい・・・はい、はい」


“はい”しか言わない謎の電話は
彼のお父さんかららしい


「一件予定が入った」


「さっきの電話?」


「少し実家に寄るけど大丈夫?」


「・・・うん」


気になってはいたけれど
お父さんが相手でも彬は壁のある話し方をする

苦手なのかな?

うちの親子を思い出して
家族は難しいと思った


到着した彬の実家は、やっぱり威圧感が凄い


「みよちゃんいらっしゃい
体調はいかがかしら?」


「お陰様で、良くなりました」


お母さんの出迎えに一瞬肩に力が入った


「仕事の話みたいだから
終わるまでお茶でもどうぞ」


断れない私は覚悟を決めた


「すぐ迎えに行くから」


耳元で囁いた彬と分かれて
お母さんに案内されたのはリビングルームだった


この家にお手伝いさんは何人いるのだろうか


我が家とは違う感覚に違和感しか感じない


お母さんの好きだという“ゲイシャ”というコーヒーを飲みながら待つこと三十分


「お待たせ」


彬が現れた時には
頬を膨らませながら駆け寄った


「あらまぁ、仲良しね」


お母さんには笑われたけれど
お試し彼氏のお母さんと二人きりとか
ハードルが高すぎる

誘われた夕食も彬が断わってくれてホッとした