「・・・付き合って、る?」


父は大きな声を出すと私に視線を移した


嫌な汗が背中を流れる


「付き合っているとは形ばかりで
娘さんはまだその気になっていないらしいが
遊びの付き合いではないと断言できると倅から説明を受けています」


眉間に皺を寄せたままの父は
返す言葉が見つからないようで

溜め息混じりの渋い顔と
時折私を見る目が切なく映った


「みよちゃんはどうしたいの?」


母の問いかけに


「私は・・・」
“お試しだから大丈夫”と
言おうとした口は閉じてしまった

言葉では説明出来ない胸の内も

“好き”かどうか分からない今は答えられない


「僕を信じてもらえませんか
年齢に差はありますが、誠実に付き合うと誓えます」


彬は父に頭を下げた


「・・・しかしなぁ
うちはこの子を跡継ぎに考えています
もしか結婚なんてことになった場合・・・」


「山下さん、まだまだ始まったばかりの付き合いですから
それは、その時改めて、ということにしませんか」


上手く話すと言った割には勝手な話だ

しかし、これ以上の進展も解決も期待出来ないと判断したのか
両親は渋々ながらも頷いてくれた



キッカケはどうであれ
秘密の付き合いは公認になった


「そろそろ、失礼しようか」


同窓会から始まって、長い長い一日

帰りの車の中で寝てしまった私は




「反対して、意固地になられても困るからな」



父の呟きには気付かなかった