苛立つ気分が落ち着くと
甘いものが食べたくなった


「ジェラート食べに行こう」


デパ地下に入店したばかりのジェラート店は、行列に並ぶ間も楽しい演出があることで有名

バーガーショップを出てデパートに向かうと、たった一階をエレベーターに乗った


地階で扉が開いた瞬間目に飛び込んできたのは、さっき見た四人だった


「・・・っ」


驚く間も無く狛犬の間を割って出てきた彬は


「みよっ」大声で詰め寄り

「何してたんだ、電話もメールも全部無視して」


一方的に責めてきた


瞬時に戻る苛立ちは
もう、止まらない


「あの後、熱が出て学校休んでたの。関係ないでしょっ」


「関係ないってなんだよ」


「私と連絡が取れない間に浮気するようなおじさんには関係ないって言ってんの」


それが声に乗ったのか
周りの視線を集めたことに気付いた彬は


「ひとまず場所を変えよう」


私の腕を掴むとエレベーターの扉を閉めた


違和感しかない六人が乗り込んだエレベーター内は居心地が悪い


「心配した」


肩を抱かれて聞いた声は
さっきと違って私を気遣っているように聞こえた


「離れて」


「ダメだ」


「香水臭い」


甘ったるい臭いに気付いた彬は
サッとコートを脱ぐと「これで平気か?」と聞いてきた


「無理、離れてよ」


だからと言って触れて欲しくない

微妙な距離を保ったままデパートを出ると、駅ナカの二階にあるお寿司屋さんへと入る

個室に通された時にはキャバ嬢は消えていた


加寿ちゃんと並んで座ると
向かい側には彬だけが座った


「みよ、この子は友達?」


「親友の加寿ちゃん」


「そうか。じゃあ加寿ちゃんはみよから聞いてる?」


「はい聞いています
さっき見掛けた時にも説明されたので」


「みよ、見かけたらなんで電話しないんだ
この五日間どれだけ心配したか」


「女と腕を組むおじさんに何て電話するの?
“仲良さそうですね”って言うの?』


思い出すだけで苛立つ


「あれは、店の女だ」


「店の女って距離感がおかしいのね」


分かっているのに嫌味な口は止まらなかった