翌日の放課後


祥子ママの店に着くと三人が立っていた

無視したまま鍵を開け店内へ入ると、いつものように掃除をする

三人のことは視界に入れず
簡単に終わらせると彬に腕を掴まれた


「これから友達と遊ぶんだけど」


「そこまで送るよ」


「ねぇ明日もここで待ってるの?
毎日会わなきゃいけないならお試しを一週間にしてよ」


苛立ちを抑えられないうちに
気づけば車に押し込まれていた

膝の上に抱かれて強引に重ねられた唇からはお酒の匂いがする


「お酒飲んでる?」


「今日は会合があってな」


「匂いで酔いそう」


「可愛いな」


クスクスと笑うその表情と切り口を変えてくる他愛もないお喋りに
気がつけばイライラした気分が消えていた


「ついでに、これ」


「チョコレート?」


「あぁ、会合で貰った」


「ありがと」


渡されたのは高そうなビロードの箱に入ったトリュフチョコ

丸くてかわいい小さなそれを
迷いなく指で摘むと口の中に放り込んだ


「美味しい」


濃厚さにウットリした途端、口の中に広がったのは苦い液体だった


「んっ、なに、これ、マズッ」


「ん?あ、ウイスキーが入ってる」


ラベルを見た彬は
「俺が食ってやるよ」と苦さの塊ごと吸い取った


離してもらえると思ったのは私だけで
頭の後ろを支える手は逃げ道を塞いできた


「・・・んっ」


口付けが深くなるごとに身体の奥が疼き始める


「・・・ん・・・んぁ・・・ぁ」


散々翻弄された身体はどこに触れられても滑落しそうで


「家の近くのスーパーマーケットの前で降ろして」


これ以上一緒にいるのは危険だと判断をした


「分かったよ」


意外にあっさりと離れてくれたことにホッとする

けれども何度も重ねられた口付けの数だけ
意識とは裏腹に身体は乱されていたようで


車から降りた時には傾きそうになる身体を必死で踏ん張る必要があった


「友達と楽しんで」


「・・・」


「また電話する」


「・・・」


店の前にあるベンチにどうにか腰掛けると
加寿ちゃんが来るのを待った


「みよちゃ〜ん」


大して待たされることなく
お目当ての姿が見えた時にはホッとして


頑張って持ち上げていた目蓋が閉じてしまった