初めての・・・
欲を打つけるみたいなキスに
身体の奥が熱を帯びる


止められないそれを離したのは
後ろの車からのクラクションだった


「「っ」」


ゆっくりと進み始めた車の中は
お互いが熱を発するみたいで


繋いだ手が汗ばんでいるのに離せない


「みよちゃん」


「ん?」


「俺、大人でもなんでもないよ」


「・・・?」


「お試し期間が早く終わって
みよちゃんが正式な彼女になれば良いって毎日毎日思ってる」


「フフ」


「だからね」


「ん?」


「早く俺を好きになって」


「・・・うん」


笑って誤魔化すこともできたのに
頷いたのはもう何度となく考えていたからで


「聞いていい?」


「ん?」


「ずっと“みよちゃん”って呼ぶの?」


「あ〜、名前のことね」


「距離を感じるよね」


「え、本当?」


「うん」


「昔をバラすようで嫌なんだけど
俺、女の子の名前って呼ぶことがなかったんだ
だから“みよちゃん”って呼ぶの凄い楽しくてさ
愛情込めて呼んでたんだけど
距離を感じられてるとは思わなかった」


「そっか、じゃあ“ちゃん付け”でも良いよ」


「良いの?」


「だって、愛情込めてるんでしょ?」


「そう、タップリ」


「フフ、じゃあそれで良い」


「分かった・・・けど
もしか不安にさせてるとかならいつでも言って?」


「うん」


やっぱり院長は言葉の裏側を探ってくれる良い大人だ
本当はいつまで経っても変化しない関係に不安になっていた

だから聞けて良かった


「もう何もない?」


「・・・あとは喧嘩、かな」


やり残しているとすれば喧嘩くらいのことだった


「喧嘩?」


「進さんとは喧嘩にならないでしょ?」


「みよちゃんなら何でも許せちゃう」


「許せなくなったら?」


「どういう意味?」


「今は好きだから許せても
気持ちって変わるんだよ」


「・・・みよちゃん」


そう言ったまま黙り込んだ院長は渋滞の中から抜け出してギャラリーの駐車場に車を止めた