「なんだ、やっぱり何も起こらないじゃない」


マーヤちゃんが安心したように言いました。


「くすくす。でも、私たち、もうアミダさまの呪文、唱えちゃったからね。これから、いつアミダさまが現れるか分からないよ?」

「ちょっと、やめてよう。こわがらせないでよう」

「カエデ、これでもう一人でトイレ行けないんじゃない? くすくす」

「いつアミダさまにゴクラクに連れて行かれるか分からないよ? くすくす」


カレンちゃんとサクラちゃんが、またカエデちゃんをからかいます。


「おいおい、おまえら、いい加減にしろよな。もう、やめだ、やめ!」


アオイちゃんはこわいのを通り越して、逆に怒り始めましたが、


「……おっ」


そのとき、彼女のケータイが鳴ったのでした。


「…………ん。今から? ああ、別にいいよ。オッケー。ん? すぐ来れるの? ああ、じゃあお願い」


アオイちゃんはケータイを切ると、


「悪ぃー、ちょっと知り合いから呼ばれちゃってさ。途中で悪いけど、ここで抜けるわー」

「え、いまから帰っちゃうの? もう遅いし、やめた方がいいよ」


マーヤちゃんが心配して言いました。


「平気、平気。知り合いがさ、ココに車よこしてくれるんだって」