阿弥陀仏の呪い

それは、とても不思議な感覚でした――。

私は親友に売り飛ばされた瞬間、

――死を覚悟しました。


ですが、そのとき――。

まさにそのときに――。

言いようのない感覚に、

とても言葉では表現しえぬ感覚に、

私は囚われていたのです。


私の目の前には、あらゆる言語の及ばぬ世界が現れ、

その世界では、山は流れて、川は流れず。

全ての概念は置き去りにされ、

時間と空間を超越した、世界そのものの姿が

私の眼前に現れ、私はそれと一体化したのでした。

私は、「自分がかわいい」という気持ちが薄れ――、

世界中すべてへの愛に、心が満たされていることを実感していました。


もしも、私がうさぎであり、

マーヤちゃんが飢えた老人であったらどうでしょう。

このときの私なら、きっと迷わず炎の中に飛び込み、

自らの身体を食料として彼女に差し出したことでしょう。


ですから、このとき、私を売ったマーヤちゃんを――、

私が抱きしめたのは、そのときの私には、

あまりにも当然のことだったのです。