散夏咲秋

 そんな土地柄に住んでいるからなのか、最近不思議な夢を見る。昏い水の夢を。

 水の中なのに息苦しさもなく、身体に絡みつく朝顔が、水面から遠ざける――そんな夢。


「……夏が終わってしまうのが、さみしいのかしら」


 遠ざかる夏の季節に置き去りにされ、忘れ去られてゆくのを、人魚が哀しんでいるからなのだろうか。そんな事を考えつつ海の近くまで来た時――また、水の夢を見た。


 夜は終わって、煌めく夜明けの夢を。

 

 水面からあたたかな光が射し込み、鮮やかな朱い葉をつけた秋の枝が、目の前に降りてくる。


 その刹那、人魚が微笑む幻想を見たような気がした。夢から覚めた先で見たものは、それを証明するものだった。



 水面に浮かぶ朱い葉が、夢じゃないと告げている。



「秋が咲いたのね」