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アンネマリーはベイエル男爵家の一人娘だ。
爵位は低いものの、アンネマリーの魔力量はかなり多く、セーデルルンド王国が誇る最高教育機関であるブレンドレル魔法学院に、特待生として入学することができるほどであった。
特待生で尚且、可憐な容姿を持つアンネマリーは、入学早々人気者となる。
誰もがアンネマリーと親しくなろうとしていたし、アンネマリー自身も自分より爵位が高い生徒たちが羨望の眼差しを向けてくることに快感を覚えていた。
このまま学院での地位を確立し、高位貴族に見初められれば、誰もが羨むほどの輝かしい人生を送ることができる──! と、アンネマリーは明るい未来の夢を見る。
その夢を叶えるために、彼女が目をつけたのがセーデルルンド王国の王子、フレードリクだ。
如何にも王子然とした整った容姿が、アンネマリーの好みであることも相俟って、彼女はフレードリクに取り入ろうと考えた。
しかし入学して一ヶ月後、アンネマリーの夢は脆くも崩れ去ることとなる。
何故なら瘴気浄化の巡業から戻ってきた当代の聖女、クリスティナが学園に遅れて入学してきたからだ。



