セーデルルンド王国の第一王子、フレードリクとの婚約破棄に学院を退学、更には<聖女>の称号を剥奪されたクリスティナは、今まさにブレンドレル魔法学院の門をくぐろうとしていた。

 学院の門をくぐった瞬間から、クリスティナはただの庶民の少女となる。
 長い期間、クリスティナが守っていたものや築き上げてきたものは全て失ってしまうのだ。

 クリスティナは万感の思いを胸に抱きながら学院の門をくぐった。
 そして外の世界へ一歩踏み出すと、ぐっと拳を握って空へと突き上げる。

「いよっっしゃーーーーーーーーーっ!! 自由だーーーーーーーーっ!!!」

 クリスティナはあまりの嬉しさに思いっきり大声で叫んだ。こんなに晴れ晴れとした気持ちは生まれて初めてかもしれない。

「まさかこんなに早く<聖女>をやめられるなんて!! めちゃラッキー!! やっほーい!!」

 フレードリクや生徒達の前にいた、貴族令嬢然としたクリスティナの面影はもうそこに存在しない。
 今ここにいるのはありとあらゆる柵から開放された、ただの少女なのだ。