月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


「あ、えっと、またみんなで遊びに来ますから。その時は珍しい料理を作りますね」

《本当?》

《どんな料理かしら!》

《約束よ! 楽しみだわ!》

 味わうことを経験した精霊たちは、ティナの料理をすっかりお気に召したらしく、ティナの言葉に目をキラキラと輝かせている。

 昨日の夜、ティナとトールは相談し合い、今までお世話になった人たちに挨拶をするため、会いに行くことにした。

 その中には大魔導士のノアに、魔道具店店主のアデラ、そしてモルガン一家が含まれている。そしてベルトルドを始めとした冒険者たちと──大神官も。

 ティナはイロナと再会したら、彼女の国の料理を教えて欲しいとお願いするつもりだ。
 そしてノアや精霊たちに、覚えた料理を振る舞いたいと思っている。

 次の満月が訪れるまでに、それらのことをこなそうと思ったら、早く行動に移さねばならない。

 ──豊かな実りと富を意味する<フェイヒュー>と、積極的な行動全般を意味する<ライドゥホ>。

 ティナはお世話になった人たちと会った後、すぐに月下草の栽培を始めようと思っている。

 きっと、両親から受け継いだ小さい希望の種は、大きな希望となってこの世界で芽吹くだろう。

 イロナの占いは、まさに未来を暗示し、行くべき道を指し示してくれていたのだ。

 ティナはノアからもらった転移の魔道具を取り出した。
 この魔道具があれば、一ヶ月以上かかる道のりもかなり短縮されるはずだ。