月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


「俺はティナから離れるつもりはないけど、それでも不測の事態に備えておいた方がいいと思う。だからティナがいつでも俺のところに帰って来られるように、魔道具を作ってあげたいんだ」

「トール……っ」

 ティナはトールの言葉を聞いて、自分が如何に彼に大事にされ、愛されているのかを実感した。

 たとえ遠い場所で二人が離れ離れになったとしても、その魔道具さえあれば迷うことなく、二人は再会を果たすことが出来るだろう。

 帰る場所があると思うだけで、ティナの心の中に勇気が湧いてくる。
 それがトールの腕の中なら、こんなに嬉しいことはない。

「うん、楽しみにしてる……!」

 ティナはトールをまるで月の光のような存在だな、と思う。
 闇に覆い隠された未来でも暗闇を照らし、明るい道を示してくれるような、そんな光だ。