「ごめん、ごめんなさい……っ! 辛い記憶を押し付けて……っ、それなのに会いに来てなんて我儘を言ってごめんなさい……っ!」

 真面目なトールは必ず約束を守ろうとしたはずだ。
 だから自分が「会いに来て」と言わなければ、トールは過去を忘れて前向きに生きていたかもしれない。
 結局、トールを”約束”で過去に縛り付けていたのは、自分自身だったのだ。

 後悔と自責の念で泣きじゃくるティナを慰めるように、再びティナを抱きしめたトールが優しい声で言った。

「ティナが我儘を言ったんじゃない。それは俺の望みでもあったんだ。ティナと約束していなかったとしても、絶対に俺は君に会いに行ったよ」

「……っ!」

 トールの言葉を聞いたティナが顔を上げると、優しい金色の瞳があった。

「だから自分を責めないで欲しい。それに辛い記憶だけじゃなかったよ。それ以上に、楽しい思い出もいっぱいあったから」

 ──そう言って優しく微笑むトールの笑顔は、今がとても幸せだと伝えてくるようで。

 きっとトールは自分が幸せだと伝えることで、ティナの罪悪感を洗い流してくれているのだろう。

「……、うん……っ!」

 トールの笑顔に応えるように、ティナも満面の笑みを浮かべた。

 もう何度目かわからない涙がティナの頬をつたうけれど、それは今この瞬間を喜ぶ、幸せの涙だった。