月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 その涙には神秘的な花の美しさへの感動と、念願だった月下草の開花を叶えた喜びも混ざっているのだろう。

 ティナは涙をぐっと拭うと、気持ちを切り替えるかのように月を見上げた。

 ここへ来て、ようやく大きな一歩を踏み出すことが出来た。しかしまだまだやらなければならないことはたくさんある。

 開花を成功させた次は、栽培場所を見つけなければならない。

 だがルーアシェイアが挙げた条件はかなり厳しく、探すのに時間がかかりそうだ。
 もはやここでしか月下草は育てられないのでは、と思ってしまう。

 それでもこの場所は街まで遠すぎて、たとえアウルムに乗せてもらったとしても、街まで往復で一ヶ月はかかるだろう。

「あの、ルーアシェイア様は月下草が育ちそうな場所に心あたりはありませんか?」 

 ティナはノアが住む小屋からも、そう離れていないぐらいの距離で月下草を栽培するつもりでいた。
 出来るのなら、街の外れの静かな場所で、のんびりとスローライフを楽しみながら、時々はノアと一緒にご飯を食べたりして、悠々自適に月下草を育てようと思っていた。