あとたった一年の間に、聖女の力無しでこの国を守る方法を模索しなければならないのだ。
 しかし、その一年という時間は、傲慢な人間に対して神が与える、最後の慈悲のようにも思えた。

 これから王国は苦難の道を歩むだろう。
 それでも誰かを犠牲にする上で得られる平穏は砂上の楼閣だと、今回のことで気付くことが出来たのだ。
 その教訓を生かすためにも、この国に住むすべての人が一致団結する必要がある。

「……クリスティナに情けない姿を見せられんからな」

 大神官は10年以上もの間、王国のために全てを捧げてくれた少女を思い出す。

 そして、少女が守ってくれたこの国を、自分たちの力で守り続けよう──と、ラーシャルード神に誓ったのであった。