月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 元々は金色をしていたらしい髪はくすみ、白髪が混じっている。そして灰色に濁った瞳は虚ろで、顔にはひび割れたような皺が刻まれていた。

 その姿に生気は全くなく、今にも寿命が尽きようとしているようだ。

 まるで美しかった少女が干からびたらこんな姿になるのでは──? そんな感想を人々に抱かせた。

 驚愕する人々をよそに、倒れた聖女を神官たちが担ぎ、大聖堂へと運んでいく。
 ここにいる誰もが、聖女を心配そうに見送った。

 予想外の出来事に人々がざわめき、大神殿中が重苦しい空気に包まれる。誰もが聖霊降臨祭が無事終わるのかと不安そうだ。

「──静粛に」

 喧騒に満ちた大神殿に、重く威厳がある大神官の声が響いた。
 先ほどまで騒いでいた人々が、その声を聞いてしん、と静まり返る。

「ここにいるほとんどの者が、此度の聖霊降臨祭に不安を抱いているであろう。見ての通り、聖女交代の弊害は出ているが、ラーシャルード神のご慈悲によりこの聖霊降臨祭は無事終了する、と大神官オスカリウスの名にかけてここに誓おう」

 大神官がそう宣言すると、不安そうだった人々の顔が明るくなっていき、重苦しかった雰囲気が一転した。

 大神官オスカリウスの名声は王国の外にも知れ渡っている。
 次期教皇候補と言われるだけあり、誰もが彼を信頼しているため、彼の言葉が人々の憂いを晴らし、安心させたのだ。