月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「え……『死の壁』、ですか……?」

「うむ。ちなみに飛行魔法で行こうと思っても無駄じゃよ。過去に湖の噂を聞いた金持ちが、優秀な魔術師や冒険者を集めて湖を見つけようとしたらしいんじゃがの。目に見えない何か──おそらく結界じゃろな。それに阻まれて、ことごとく失敗しとるでな」

 確かに登れないような絶壁なら、飛行魔法で乗り越える方法が最善だ。だからその金持ちも優秀な魔術師を雇ったのだろうが、結局湖の捜索は失敗に終わってしまったらしい。

「そんな場所にどうやって行けば……っ。ティナは大丈夫でしょうか?」

 ティナはノアでさえ辿り着けない場所を目指しているという。
 きっとティナのことだから、怪我はしていないと思う。しかし、心配なことに変わり無い。

「嬢ちゃんには聖獣が付いとるでな。聖獣の主なんじゃから、なんも心配はいらん」

 確かにアウルムなら、結界なんてあっさり突破できそうだ。
 それに聖獣であるアウルムほど、ティナに相応しい護衛はいないだろう。きっと精霊王の湖までティナを導いてくれるはずだ。

「それなら良かったです。問題は俺ですね。場所がわかっても辿り着けない可能性が……」