「ええのうええのう、青春じゃのう。若いって素晴らしいのう」

 ノアはトールの答えに何故かとても満足げだ。すっごく良い笑顔まで浮かべている。

「坊ちゃんは腹が減っておらんか? よければワシがご馳走してやるぞい」

「……いえ、なるべく早くティナを探したいですし、気持ちだけで──「嬢ちゃんが作ってくれた料理を食べとうないんか?」──っ、食べます!」

 お茶を飲んだらすぐ出発しようと思っていたトールだったが、ノアの悪魔のような誘惑にあっけなく撃沈してしまう。

 それからトールは散々ノアの昔話を聞かされることになった。
 その内容はノアが七百歳以上を生きるハーフエルフだという話から始まり、若い頃からモテモテで困ったこと、時空間魔法を極めようと研究していたこと、好奇心旺盛な性格が災いして精霊に嫌われていること、今はこの森の生態系を調べつつポーションを作っていることなど、多岐に渡った。

 トールはノアの話に散々付き合わされる羽目になったが、ティナの作り置きしてくれていた料理を堪能しながらだったので、全く苦にならなかった。

 そして気がつけば夜も更けていて、結局トールはノアの小屋で一泊することになったのだった。