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冒険者登録に行っていたトールが戻り、ティナはこれからのことについて話し合う。
「登録は無事に済んだの? 試験は受けたんだよね?」
「それがギルド長が手を回してくれたらしくてね。試験もなしでDランクスタートにして貰えたよ」
「えっ!? 本当!? あ、でもそう言えばトールってば強いものね。当然の結果かも」
ティナはベルトルドの手際の良さに感心する。流石王都本部のギルド長だ。人を見る目も長けているらしい。
実際トールは学院でも常に上位の成績だった。魔力の多さを活かした多種多様な魔法展開は見事で、希望すれば卒業後は誰もが憧れる宮廷魔導師の職にも就けただろう。
だがトールが得意とするのは意外なことに戦闘演習で、対人戦では負け知らずであった。
「ティナがそんなに俺を高く評価してくれてるなんて嬉しいな」
「正当な評価だよ。トールってすごく優秀で一位だって狙えるのに、わざと実力を隠しているのかなって」
普通であれば優秀な成績を修めるために、全力を出して競争するはずなのに、何故かトールからはそんな必死さを感じない。
それに留学生は胸を張って帰国出来るよう、卒業まで必死に勉学に励むが、トールはそれすら放棄し、卒業も待たず退学してしまった。
しかも冒険者になって帰って来た息子を見て、両親はなんて思うのだろうか、と考えてティナは「あ」と気が付いた。



