月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 精霊は時々ゆりかごから出てはエーレンフリートの子孫を見守っていたのだろう。

 ルシオラがトールの前に現れたのは宝物庫を見学した後だった。きっとトールの気配を感じ、目が覚めたのかもしれない。

「じゃあ、これからはこうしてルシオラと会話できるんだ。すごく嬉しいな」

《うふふ。わたしもすーっごく嬉しい! ずっと歯痒かったのよね!》

 イメージでは細かいニュアンスまで伝わらなかったから、ずっとルシオラはもどかしかったと言う。

《早くティナとアウルムに会いたいわ! わたしを見たらびっくりすると思うの!》

 ずっと一緒に旅をしていたものの、ティナはルシオラの存在に全く気づいていなかった。アウルムとは疎通があったものの、当時はお互い会話が出来るほどではなかった。
 しかし、力を取り戻した今ならきっと、二人と仲良く出来るに違いない、とルシオラは信じて疑わない。

「そうだね。俺も早く会いたいよ」

《わたしに任せて! ティナとアウルムの気配を感じたらすぐに教えるわ!》

「うん、ありがとう。頼りにしてる」

 実際、トールはルシオラをとても頼りにし、感謝していた。
 しかもこれからは会話ができるから、ティナを探す効率がかなり上がるだろう。