月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 いくら人間が考えても、人智を超えた存在のことなどわかるはずもないからだ。

 そうしてノアの小屋から出発してから、幾つもの日が流れた。
 夜になると野宿をし、朝が来ると湖を目指して走っていく。

 ティナは走りっぱなしのアウルムの身体を労わろうと、回復魔法を掛けようとするが、その必要がないぐらいアウルムは元気だった。
 今も楽しそうに、まるでこれが本来の姿だというように、森の中を元気に駆けている。

 ちなみにティナはティナで、澱んでいる魔力を元に戻すため、休息をとる度に魔力を全身に循環させる練習を行なっていた。
 以前ノアに指摘され、魔力の澱みを改善する方法を教えてもらったのだ。

 そして夜になると星を眺め、木々の息吹や風のざわめきを聞き、自然を感じながら眠りについていた。アデラが教えてくれた自然に触れるという意味を、ティナなりに実践しているのだ。

 そしてさらに幾つもの朝と夜を迎えたある日、突然目の前に開けた空間が現れた。

「うわぁ……っ!!」

 ティナは目の前の光景に感動する。