それまでにトールへの想いを断ち切って、胸が痛まなくなる頃にはきっと、昔のように笑い合えるだろう、とティナは思う。

「私、精霊王の湖を探しに行こうと思います」

 ティナは考えた末、決意したことをノアに伝えた。
 
「そうかそうか。よく決断したのう。嬢ちゃんは強い子じゃ。きっと精霊王も嬢ちゃんを気にいるじゃろうて」

 ノアはティナの決意を聞いて喜び、応援してくれた。
 まるで本当の祖父のように、温かくティナを見守ってくれたノアには、いくら感謝しても仕切れない。

「……はい! 必ず見つけます! そしてまた落ち着いたら、ここに戻ってきてもいいですか……?」

「もちろんじゃよ。もうここは嬢ちゃんの家じゃからな。ワシゃいつでも待っとるからの」

 ノアと過ごした時間はほんの一ヶ月だけだった。
 だけど、時間に関係なく、ティナとノアの間には本当の家族に負けないぐらいの絆が生まれていたのだ。



 ──それから三日後の朝、準備を終えたティナとアウルムは、ノアの小屋から湖を探す旅へと出発した。

 そしてティナとノアの二人は、ひと時の別れを惜しみ、お互いの姿が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。