月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ティナはノアの言葉にドキッとする。不覚にも心の奥で期待してしまったのだ。

「いやいや! トールがここまで来るなんてことはないですよ! 彼はすごく身分が高いから、忙しいでしょうし……!」

 一瞬期待したものの、ティナはノアの言葉を否定する。

 何よりも、トールを拒絶したのは自分なのだ。しかもひどい言葉をぶつけた自分を、トールが追いかけて来てくれるとはとても思えない。

「そうか。待ち人はトールという名前なんじゃな。嬢ちゃんとの間に何があったのかは知らんが……人の縁はそう簡単に切れんからのう。嬢ちゃんがトールを想い続ける限り、もう一度会う機会が必ず訪れるじゃろて」

「……そう、なんですかね……」

 ノアが言う通り、ティナが望めば今すぐにでもトールに会いに行けるだろう。しかし、今の自分にはトールと会う資格がないように思う。

 だからトールと再会するのは、月下草の栽培場所を見つけ、栽培を成功させてからだ。
 その時は誠心誠意謝り倒して許してもらおう。トールは優しいから、呆れながらも許してくれるに違いない。