「──っ?! <我が力の源よ 凛冽の白い息吹で 世界を白き墓標で埋め尽くせ アルゲオ・ムンドゥス!!>」

 元当主の命令を遂行しようと動き出した暗殺者達が、襲いかかるポーズのまま白く固まった。
 それは一瞬の出来事で、暗殺者も自覚しないまま氷漬けにされてしまっただろう。

「……なっ?! なんだこの威力はっ!!! 一体お前は何なんだっ?! やはりお前は化け物なのだなっ!!」

 トールは元当主だけを残して辺り一面を真っ白な氷の世界へと変貌させた。
 元当主はあり得ない光景にパニックになる。

「この化け物めっ!! 儂は誤魔化されんぞっ!! お前は人にあるまじき怪物なのだっ!!!」

 元当主からの罵詈雑言にも、トールは全く動揺しない。こんな男の言葉など何一つ響かない。

 しかし、トールは数々の暴言の中に気になる言葉を見つけ、元当主の背後に潜んでいる黒幕に当たりをつけることが出来た。

「一応お聞きしますが、貴方の背後にいる人物は誰ですか? ……ああ、時間がもったいないのでさっさと答えてくださいね」

 元当主に向かってトールは瞳を光らせる。それはまるで、世界を見通す月のように、金色に輝いていた。