月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。






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 王都ブライトクロイツから出発して十日が経った頃、トールはようやくティナの手掛かりを見付けることができた。

「……えっ?! 空を飛んでいたって?!」

 それは、精霊が鳥から教えてもらった情報で、白い翼が生えた大きい獣が、フラウエンロープの方角へ飛んで行った、という話であった。

 ちなみにトールと共にいる精霊は言葉を発しない。伝えたいことはイメージとして、直接脳に伝えてくるのだ。

「その獣がアウルムの可能性はあるかな?」

 トールは精霊に聞いてみた。実はトールにアウルムが聖獣だと教えてくれたのも、精霊だったのだ。

 いつもそばにいる精霊を、トールは「ルシオラ」と名付けていた。意味は古代語で「蛍」だ。

 ルシオラは上級の精霊ではあるが、今はトールの魔力を糧としているため、本来の力を発揮できていない。

「有難う、ルシオラ。アウルムの魔力が戻ったんだね」

 ルシオラから伝えられたイメージは、瘴気で弱っていたアウルムが元気になり、本来の力を取り戻した、という内容だった。