だからトールは一刻も早くティナと再会し、許しを乞い、この気持ちを伝えたいと願う。

 ティナがフラウエンロープに向かっているのなら、このまま走り続ければ近いうちに追いつけるかもしれない。

 トールが乗っている馬は訓練されていて一日中でも走り続けられるが、だからと言って馬を乗り潰したくないトールは、たびたび休憩を取っては馬を労っていた。

 そしてその度に精霊に頼み、ティナの痕跡を探してもらっていたのだが……。

(……おかしい。精霊に聞いてもティナがこの道を通った形跡がない……!)

 ここに来てティナがフラウエンロープではなく、違う国に向かった可能性が出てきてしまい、トールは内心焦る。

(まさか、イリンイーナへ向かった……?)

 小さい頃のティナは、ヴァルナル達と一緒にイリンイーナへ行ったことがあると言っていた。
 イリンイーナはティナにとって、両親との思い出の場所でもある。
 それに、イリンイーナは自然あふれる豊かな国で、神聖な森があるといわれているのだ。ティナは必ずその森を訪れたいと思うだろう。

(くそ……っ! 誤ったか……?!)