月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ノアの言葉はどれも納得出来るものばかりで、疑問に思っていたことの説明もついた。

 ティナはフレードリクから婚約破棄され、アンネマリーに聖女の称号を奪われた日を思い出す。
 あの日からティナは不思議に思っていたのだ。神聖力を持たず、ただ魔力が多いだけのアンネマリーが、なぜ聖女の腕輪を外すことが出来たのか。

 結局、神殿が必要としていたのは神聖力を持つ人間ではなく、より多い魔力を持つ人間だったのだ。
 神聖力は神殿の威光を示すための託言──口実なのだろう。

「……つい長話をしてしまったのう。嬢ちゃんは腹減っておらんか? 一緒に飯でも食うか?」

 黙り込んでしまったティナを気遣うように、ノアが食事にしようと言ってくれた。

「はい、そうですね。じゃあ、私がノアさんにご馳走しますよ」

 ティナは感謝の気持ちを込めて、ノアに食事を作ってあげたいと思う。

 この場所でノアに出会えたのは僥倖の極みだろう。彼に出会わなければきっと、道に迷わなかったとしても、精霊王に会えなかったような気がするのだ。

「そうかそうか! そりゃ楽しみじゃわい! 人の手料理なんぞ何年振りかのう……」