月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

『そうなのー。山のほうはもっと遠いのー』

 自然が広大過ぎて、遠近感が狂っているのかもしれない。だけどそんなに広い森ならきっと、月下草が生息している可能性はかなり高いだろう。

「お父さんたちはこの森に来たのかな……。でもこんなに大きい森なら探すのも大変だっただろうな」

 ティナは両親が残してくれた月下草の種と一緒に、訪れた場所に印が付けてある地図の存在を思い出した。
 まだじっくりと見ていなかったが、確認すればこの森にも印がつけられているかもしれない。

「あ、そっか。あの地図を見たら候補地がわかるんだった。うっかり忘れてたや……」

 トールと別れた後、とにかく王都から離れたかったティナは、思いつきでここまで来たのだ。もしこの森で月下草が見つからなかったら、両親が辿った軌跡を追ってみるのも悪くない。

 あとで地図を確認してみようと思ったティナは、ひとまず森の散策に集中する。

「あれっ?! この実って……! えっ?! この草はまさか……?!」

 よくよく周囲を見てみれば、解毒剤の材料になる木の実が鈴なりに、一時的に腕力が向上するポーションの原料となる草が群生している。