月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 アウルムはいつも料理をとても美味しそうに食べてくれるので、調理する側としてとてもやりがいがある。

「ふふ、よかった。チーズの美味しい食べ方を聞いてきたから、また作ってみるね」

『うんー! たのしみー!』

 アウルムの食べっぷりをみたティナは、自分も食事にすることにした。
 自然の中で食べる料理はとても美味しい……はずなのだが、あまり食が進まない。

「イロナさんが作った料理、美味しかったな……」

 ティナはふと、イロナの手料理を思い出す。自分で作った料理は何か物足りなく感じてしまうのだ。
 きっとそれは味だけじゃなくて、一緒に食べてくれる人がいない寂しさなのかもしれない。

「……トール……」

 ティナはトールのことを思い出す。
 彼のことはもう忘れようと思うものの、ふとした瞬間トールのことを考えてしまうのだ。

「もうトールは王様になるんだし……。身分違いもはなはだしいよね……」

 聖女だった頃はともかく、平民に戻った今、トールは雲の上の存在だ。話すことはおろか、顔を見るだけでも難しいはずだ。