月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 入り口付近ならまだ大丈夫だが、一旦森の奥に足を踏み入れると方向感覚を失い、熟練の冒険者でも遭難してしまうことから、<迷いの森>と呼ばれるようになったと伝えられている。

 まるで来る者全てを拒絶するかのような場所であるが、森に入っても無事に帰ってくる者が極稀に現れるらしい。

 その者たちは性別も年齢もバラバラで共通点がないため、何故その者たちだけ大丈夫なのか未だ判明していない。

 とにかくその<迷いの森>は謎と不思議に満ちた場所なのだ。

「……そこにティナが向かったのなら見つけやすいですね。他の国じゃ探し出せるかどうか難しいですから」

 ティナが<迷いの森>に行ったかもしれないのに、何故か安堵しているトールを見てアデラは不思議に思う。

「何だい。あんたはあの娘があの森で迷わないって確信しているのかい?」

「はい。ティナですから」

 ティナの無事を信じて疑わないトールに、アデラもなるほど、と思う。
 確かにティナは不思議な少女だった。初対面なのに彼女を妙に気に入ったのも、何か理由があるのだろう。