月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 人に興味を示さないアデラが、ティナにここまで興味を持つなんて、とトールは意外に思う。きっと悪い意味ではないだろうけれど。

「あの娘はねぇ。私の身体をすっかり健康にしちまったんだよ! 長年悩まされていた腰痛も完治させてね。今じゃ走れるぐらいだよ!」

 ティナに腰をマッサージして貰ったあの日、うたた寝をしてしまったアデラが目を覚ますと、すでにティナたちの姿はなかった。
 店の戸締りのため、身体を起こそうとしたアデラは、自身の変化に驚いた。
 いつもは腰が痛くて起き上がるのに時間がかかっていたのに、全く痛みを感じることなく身体を起こせたのだ。

 しかも常に感じていた心臓の痛みまで消えていて、アデラはティナが自分を癒してくれたことに気がついた。

「おまけしたブレスレットのお礼か何か知らないが、これじゃあ全く割に合わない。何としてもこの借りを返さないとね! 気持ち悪いったらありゃしないよ!」

 言葉はきついが、アデラは何とかティナにお礼をしたいのだと言っているのだ。素直じゃない性格のアデラだからよく勘違いされてしまうが、本当は根は優しくて義理堅い。